特にコロナ禍以降、「看取り」や「無理な延命は不要」といった言葉が「日常のことば」のようになって来ていますが、「もっと早期に適切な治療やリハビリをすれば元気になれたのでは?」・「もっとできることがあるのでは?」という方が、十分な検討・治療なしで「高齢だから仕方ない」・「もう寿命」等と言われてしまう事が増えてきているのではないかと日々懸念をいだいております。
真のQOLを考えるのなら、「死ぬ権利」を考える前に「日々の生命の質を高めるためにできる事はもうないのか(やり残している事はもうないのか)」を最後の瞬間まで考えることが最も大事であり、これがホスピス等の緩和ケアに限らず、本来の医療介護の倫理であるはずです。
高齢者医療・介護の現場でこれを日々考えていると、「問題となるような苦痛や負担がなく、効果も期待できる医療・ケア・リハビリ」がやり残されていることが多いのも分かります(もちろん、いくら試しても改善が見られず、悪化し、亡くなられる方もおられますが、事前に予測するのは一般に信じられているよりはるかに困難で、ほとんどの場合、後から振り返ってしか判断できません)。
高齢者医療・介護を日々の仕事にし、あるいは脳神経内科医として25年前からACP的話し合いが仕事の基本だったものとして、上記問題意識も込め「ごあいさつ」の一文とさせていただきました。